1. 会社が出した引っ越し費用は、通常必要な範囲なら非課税
所得税法では、次のような引っ越しのための旅行について、その旅行に必要な費用として支給されるお金のうち、通常必要と認められるものには所得税をかけないと決めています(所得税法第9条第1項第4号)。
- 給与をもらっている人の転任(転勤)にともなう転居
- 就職にともなう転居
- 退職にともなう転居
- 死亡による退職をした人の遺族の転居
国税庁の質疑応答事例でも、社員を転勤させた場合に、その転居のための旅行に通常必要な支出として支給する運賃や移転料などは、原則として課税の対象にならないとしています。
2. 非課税になる範囲の考え方
国税庁の所得税基本通達では、非課税になるのは、引っ越しの旅行に必要な運賃・宿泊料・移転料などとして会社から支給されるお金のうち、旅行の目的や目的地、行路、期間の長さ、宿泊が必要かどうか、本人の職務の内容や地位などからみて、通常必要な費用に充てられると認められる範囲だとしています(所得税基本通達9-3)。
その範囲に入るかどうかは、次のことを考えて判断するとされています。
- 支給する金額が、会社の役員と社員の全体を通じて、バランスのとれた基準で計算されているか
- 支給する金額が、同じ業種・同じ規模のほかの会社が一般的に支給している金額と比べて、相当といえるか
具体的に「いくらまで」という金額が決められているわけではなく、上のような基準で判断されます。扱いに迷う場合は、会社の担当部署や税務署に確認しましょう。
3. 範囲を超えた分・非課税にならないもの
通常必要な範囲を超えた分
支給されたお金が、通常必要な範囲を超えている場合は、超えた部分が次の所得として扱われます(所得税基本通達9-4)。
| 引っ越しの理由 | 範囲を超えた部分の扱い |
|---|---|
| 転任(転勤)にともなう転居 | 給与所得 |
| 就職にともなう転居 | 雑所得 |
| 退職にともなう転居 | 退職所得 |
単身赴任先での「着後滞在費」
国税庁の質疑応答事例では、転勤先で社宅が確保できず単身赴任になった社員に、当分の間、毎月決まった額を支給する「着後滞在費」は、一種の別居手当や住宅手当と考えられるので、給与として課税されるとしています。引っ越しのための旅行の費用とは別のものとして扱われます。
4. 自分で引っ越し費用を払ったとき(特定支出控除)
転勤の引っ越し費用を自分で払った場合は、給与所得者の特定支出控除が使えることがあります。国税庁のタックスアンサー(No.1415)では、特定支出の一つとして「転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)」を挙げています。
- その年の特定支出の合計額が、給与所得控除額の2分の1を超えるときに、超えた部分を差し引ける
- 受けるには確定申告が必要。特定支出の明細書と、給与の支払者(会社)の証明書を付け、支出したことと金額がわかる書類を付けるか見せる
- 会社から補てんされた部分で、所得税がかかっていないものは、特定支出に含まれない
転居費だけで給与所得控除額の2分の1を超えるかどうかは、人によって違います。使えるかどうかは、確定申告の前に税務署などで確かめましょう。引っ越した年の確定申告の提出先は「引っ越した年の確定申告はどこに出す?」で解説しています。
5. 会社に確認しておきたいこと
会社が引っ越し費用を出すかどうかや、出す範囲は、会社の規程(旅費規程など)によって違います。引越ナビの目安として、引っ越しを手配する前に次のことを会社に確認しておくと安心です。
- 会社が出してくれる費用の範囲(引っ越し業者の代金、交通費、宿泊費など)
- 業者を会社が決めるのか、自分で選ぶのか。見積書は何社分を出すのか
- 立て替えて払う場合に、領収書など何を出せばいいか
- 単身赴任の場合に、手当がどう扱われるか
引っ越しの見積もりのルールや、見積書で確かめることは「引っ越しの見積もりはいつから?」で解説しています。転勤で住所が変わったときの住民税の扱いは「引っ越したら住民税はどうなる?」を見てください。
6. よくある質問(FAQ)
- Q. 転勤の引っ越し費用を会社が出したら、所得税はかかる?
- A. 引っ越しのための旅行に通常必要と認められる範囲なら、所得税はかかりません(所得税法第9条第1項第4号)。国税庁も、転勤させた社員の転居のための運賃や移転料などは、原則として課税の対象にならないとしています。
- Q. 新社会人の就職の引っ越し費用を会社が出した場合も非課税?
- A. 所得税法第9条第1項第4号では、就職にともなう転居のための旅行も非課税の対象に入っています。通常必要な範囲を超えた部分は、雑所得として扱われます(所得税基本通達9-4)。
- Q. 単身赴任の手当にも税金はかからない?
- A. 国税庁の質疑応答事例では、転勤先で単身赴任になった社員に当分の間毎月支給する「着後滞在費」は、別居手当や住宅手当の性格のものとして、給与として課税されるとしています。
- Q. 転勤の引っ越し費用を自分で払ったら、確定申告で取り戻せる?
- A. 給与所得者の特定支出控除の「転居費」にあたる場合があります。ただし、その年の特定支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超える必要があり、会社の証明書を付けて確定申告をします(国税庁 No.1415)。
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※ 本記事は、所得税法(第9条第1項第4号)、国税庁(所得税基本通達9-3・9-4、質疑応答事例「単身赴任者等に支給するいわゆる着後滞在費」、タックスアンサーNo.1415「給与所得者の特定支出控除」)の公式情報をもとに、2026年10月時点の情報で作成しています。個別の扱いは、会社の担当部署や税務署にご確認ください。