- 要介護・要支援の認定を受けている人は、引っ越し先に住み始めた日から14日以内に認定の申請をすると、今の介護度を引き継げる
- 14日は「転入届を出した日」ではなく、実際に住み始めた日から数える
- 食費・居住費の負担を軽くする「負担限度額認定」などは引き継がれないので、引っ越し先で申請し直す
- 65歳以上の人の保険料は、引っ越し先ではしばらく年金から天引きされず、納付書か口座振替で払う
- 特別養護老人ホームや有料老人ホームなどに入って住所を移す場合は、前の市区町村の介護保険のままになる(住所地特例)
1. 介護保険は「住んでいる市区町村」の制度
介護保険は、住んでいる市区町村が運営しています。65歳以上の人と、40〜64歳で医療保険に入っている人は、その市区町村に住所を持った日から、その市区町村の介護保険に入ります(介護保険法第10条)。前の市区町村の介護保険は、原則として住所がなくなった日の翌日に資格がなくなります。ただし、同じ日に別の市区町村に住所を持った場合は、その日に資格がなくなります(第11条)。
つまり、市外へ引っ越すと、介護保険の運営者(保険者)が引っ越し先の市区町村に変わります。介護保険被保険者証(介護保険証)も、引っ越し先の市区町村のものに変わります。
65歳以上の人の場合、住民票の転入届を出すと、介護保険の資格を取ったことの届け出もしたものとみなされます(第12条第5項)。そのため、要介護・要支援の認定を受けていない人は、転入届のほかに特別な手続きはいりません。越前市や柏市は、認定を受けていなかった人には後日、介護保険証を送ると案内しています。
- 認定:要介護1〜5、要支援1・2のどれにあたるかを市区町村が決めること。介護サービスを使うには認定が必要
- 受給資格証明書:前の市区町村で受けていた認定の内容を証明する書類。引っ越し先で認定を引き継ぐときに使う
- 住所地特例:施設に入って住所を移しても、前の市区町村の介護保険のままになるしくみ
2. 認定の引き継ぎは14日以内
介護保険法では、前の市区町村で認定を受けていた人が、引っ越し先の介護保険に入った日から14日以内に、前の市区町村の証明書をつけて申請したときは、引っ越し先の市区町村は審査を行わずに、その内容のまま認定できるとしています(第36条)。つまり、14日以内に申請すれば、今の介護度を引き継げます。
14日の数え方にも注意が必要です。柏市は、転入日とは「実際に転出先の市区町村に住み始めた日(異動日)であり、届出をした日ではありません」と案内しています。大田区も、住み始めた日は転入届を出した日と同じとは限らないとしています。転入届を遅れて出すと、そのぶん申請できる日が少なくなります。
引き継いだ認定の有効期間は、引っ越し先の市区町村が決めます。大田区は、区で受けた認定は転出先で継続できる(原則6か月)と案内しています。前の市区町村での有効期間がそのまま続くとは限らないので、新しい介護保険証で有効期間を確かめましょう。
認定を申請している途中で、まだ結果が出ていないときに引っ越す場合は、扱いが市区町村によって違います。大田区は、介護保険課に問い合わせるよう案内しています。
3. 引っ越す前:今の市区町村でする手続き
市外へ引っ越すときに、今の市区町村でする介護保険の手続きは次のとおりです。
| やること | 内容(公式の案内) |
|---|---|
| 介護保険証などを返す | 資格がなくなったら、介護保険証は速やかに返す(介護保険法第12条第4項)。柏市は、介護保険負担割合証や介護保険負担限度額認定証を持っている人はそれも返すよう案内している。郵送でも返せる |
| 受給資格証明書をもらう(認定を受けている人) | 柏市は、転出の手続きをする窓口で「介護保険受給資格証明書」を発行するとしている。大田区は、転出の手続きのあと、窓口か電話で介護保険課に申し出るよう案内している |
| 保険料の精算(65歳以上) | 柏市は、転出日の前月分までの保険料を月割りで計算し直して、納付や払い戻しの案内をあとで新しい住所へ送るとしている |
| 施設に入るために住所を移す場合 | 住所地特例にあたる施設なら、今の市区町村の介護保険のままになる。大田区は「住所地特例適用届」を出すよう案内している(くわしくは6章) |
マイナポータルで転出届を出した場合
マイナポータルを使ってオンラインで転出届を出すこともできます。京都市は、オンラインで転出の手続きをすれば、介護保険の転出届は別に出さなくてよいとしています。ただし、介護保険証や負担割合証などは郵送で返す必要があります。
受給資格証明書の扱いは市区町村によって違います。京都市は、転出先の自治体がマイナンバーを使って認定を引き継げるため、原則として受給資格証明書は発行しないとしています。今の市区町村の案内を確かめ、わからないときは介護保険の担当課に問い合わせましょう。
4. 引っ越したあと:新しい市区町村でする手続き
認定を受けている人は14日以内に申請
引っ越し先の市区町村で、住み始めた日から14日以内に、認定を引き継ぐための申請をします。福井市が案内している持ち物は次のとおりです。
- マイナンバーがわかるもの
- 受給資格証明書(持っている人)
- 加入している健康保険がわかるもの
大田区は、受給資格証明書の用意がなくても申請できるとしています。40〜64歳の人は健康保険証も必要です。申請の方法は、窓口のほか、郵送や電子申請(マイナポータル)でもできると案内しています。持ち物や申請の方法は市区町村によって違うので、引っ越し先の案内を確かめましょう。
新しい介護保険証は、手続きのあとに郵送されることが多いです。鹿児島市は、申請からおおむね1週間以内に送るとしています。
ケアマネジャー・介護サービスの事業所
介護サービスを使うには、ケアプラン(介護サービスの計画)を作ってもらう事業所を決めて、市区町村に届け出ます。沖縄県うるま市は、市に転入してサービスを使うときは、ケアマネジャーの事業所が変わらない場合も届け出(居宅届)が必要だとしています。
遠くへ引っ越すときは、ケアマネジャーや、デイサービスなどの事業所を変えることが多くなります。引っ越しが決まったら、今のケアマネジャーに早めに相談して、引っ越し先の事業所探しや、サービスが途切れないための段取りを確かめましょう。
- 負担限度額認定(施設での食費・居住費の負担を軽くする認定):柏市は、引っ越し先で新たに申請が必要としている。大田区は、当月中に新しい住所の介護保険の担当課に連絡するよう案内している
- 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業):柏市は、前の住所で総合事業のサービスを使っていた人は引き継ぎがないので、地域包括支援センターであらためて基本チェックリストを受けるよう案内している
5. 保険料はどうなる?(65歳以上)
65歳以上の人の介護保険料は、市区町村ごとに金額が違います。引っ越すと、前の市区町村と新しい市区町村に、それぞれ住んでいた月数の分を払います。
- 前の市区町村:柏市は、転出日の前月分までを月割りで計算し直すとしている
- 新しい市区町村:西宮市は、10月3日に転入した場合は10月から翌年3月までの6か月分で計算するという例を出している
しばらくは年金から天引きされない
年金から介護保険料が天引きされていた人も、引っ越し先ではしばらく納付書か口座振替で払います。西宮市は、転入した人は手続きが終わるまで年金から天引きできないため、約1年は納付書か口座振替で払い、天引きは原則として翌年度以降になるとしています。鹿児島市も、天引きに切り替わるのは半年から1年後の見込みとしています。
また、鹿児島市は、引っ越したあともすぐには前の市区町村の天引きが止まらないため、前の市区町村の保険料が引かれることがあると案内しています。払いすぎた分は、あとで払い戻しの書類が届きます。天引きと納付書が重なっても、すぐに間違いとは限りません。気になるときは前の市区町村に確かめましょう。
岡山市は、介護保険料は国民健康保険などと違い、年金からの天引きと納付書での支払いを選ぶしくみはないとしています。
最初は仮の金額で通知されることがある
保険料は前の年の所得などで決まりますが、引っ越し先の市区町村には所得の情報がありません。西宮市は、前の住所地に所得を問い合わせて回答が来るまでは、いちばん低い「第1段階」で月割り計算した金額を通知し、回答が来てから正しい金額を通知するとしています。あとから保険料が増えることがあるので、通知はとっておきましょう。
国民健康保険に入っている人は、国保の手続きも必要です。「引っ越しの国民健康保険の手続き」で解説しています。
6. 施設に入るために住所を移すとき(住所地特例)
介護保険法では、次の施設に入って、施設のある場所に住所を移した人は、入る前に住んでいた市区町村の介護保険のままになるとしています(第13条)。これを「住所地特例」といいます。施設が多い市区町村に負担が集中しないようにするためのしくみです。
- 介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院など)
- 特定施設(有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)など)
- 養護老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、食事・介護・家事・健康管理のいずれかを提供していて、有料老人ホームにあたる場合に対象になります。東京都は、2015年3月31日以前に入居した人は対象外としています。
住所地特例にあたるときは、介護保険を運営している市区町村(入る前に住んでいた市区町村)に、14日以内に届け出をします(介護保険法施行規則第25条)。越前市は、住所地特例にあたる施設に転出した人には、後日新しい住所に新しい介護保険証を送ると案内しています。
7. 同じ市内で引っ越すとき
同じ市区町村の中で引っ越したときも、14日以内に住所の変更を届け出ます(介護保険法施行規則第30条)。介護保険証の扱いは市区町村によって違います。
| 市区町村 | 市内で引っ越したときの介護保険証(公式の案内) |
|---|---|
| 千葉県柏市 | 介護保険証と負担割合証は古い住所のままでも使える。希望する人にだけ新しい住所のものを発行する。負担限度額認定証を持っている人は申請し直す |
| 福井県越前市 | 転居届を出したあと、新しい住所に新しい介護保険証を送る |
認定はそのまま続くので、介護度を引き継ぐ手続きはいりません。ケアマネジャーや事業所には、新しい住所を伝えておきましょう。
8. 引っ越しまでの段取り
引越ナビの目安として、介護保険の手続きは次の順番で進めると、もれが少なくなります。
| 時期(目安) | やること |
|---|---|
| 引っ越しが決まったら | 今のケアマネジャーに相談する。引っ越し先の市区町村の介護保険の担当課に、認定の引き継ぎの方法と持ち物を確かめる |
| 引っ越し先が決まったら | 引っ越し先で使う事業所を探す。施設に入る場合は、住所地特例にあたるかを確かめる |
| 転出届を出すとき | 受給資格証明書をもらう(または引き継ぎの方法を確かめる)。介護保険証などを返す |
| 引っ越したら、すぐ | 転入届を出し、住み始めた日から14日以内に認定を引き継ぐ申請をする。負担限度額認定やケアプランの届け出もする |
| 引っ越したあと数か月 | 保険料は納付書か口座振替で払う。前の市区町村からの精算の通知も確かめる |
転入届の出し方は「転出届・転入届・転居届の出し方」で解説しています。
9. よくある質問(FAQ)
- Q. 引っ越すと要介護認定はどうなる?
- A. 引っ越し先に住み始めた日から14日以内に申請すれば、今の介護度を引き継げます(介護保険法第36条)。柏市は、14日を過ぎると介護度を引き継げなくなると案内しています。
- Q. 14日はいつから数える?
- A. 実際に引っ越し先に住み始めた日から数えます。柏市は、転入日は届け出をした日ではなく、実際に住み始めた日だと案内しています。転入届が遅れると、申請できる日が少なくなります。
- Q. 受給資格証明書をなくした・もらっていないときは?
- A. 引っ越し先の市区町村に相談しましょう。大田区は、受給資格証明書の用意がなくても申請できるとしています。京都市は、オンラインで転出した場合、転出先がマイナンバーで引き継げるため、原則として受給資格証明書は発行しないとしています。
- Q. 引っ越したら介護保険料が年金から引かれなくなったのはなぜ?
- A. 引っ越し先の市区町村では、年金から天引きする準備が終わるまで、納付書か口座振替で払うためです。西宮市は約1年、鹿児島市は半年から1年後に天引きに切り替わるとしています。
- Q. 親を施設に入れるために住民票を移すと、介護保険はどうなる?
- A. 特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、住所地特例にあたる施設なら、前に住んでいた市区町村の介護保険のままです。グループホームなどの地域密着型の施設は対象外なので、施設のある市区町村の介護保険に変わります。
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※ 本記事は、介護保険法(第10条〜第13条・第36条)、介護保険法施行規則(第23条・第25条・第30条・第32条・第38条)、千葉県柏市(住所が変わるとき・亡くなられたとき)、東京都大田区(介護保険 転入・転出の手続き)、京都市(オンライン転出に伴う介護保険の手続等について)、鹿児島市(よくある質問:転入した場合の介護保険の手続き、納付書と特別徴収)、兵庫県西宮市(転入してきた人の介護保険料)、岡山市(介護保険料の納め方)、東京都(サービス付き高齢者向け住宅の住所地特例について)、沖縄県うるま市(居宅届)、福井市(介護保険の要介護認定を受けている)、福井県越前市(引っ越し)の公式情報をもとに、2026年11月時点の情報で作成しています。介護保険の手続きは市区町村によって違うため、お住まいの市区町村と引っ越し先の市区町村の案内をご確認ください。段取りの時期は引越ナビの目安です。